中間教室に行ってみたよ
ずいぶんごぶさたしております。
「あ、これ書きたいかも!」というテーマはちょこちょこあったのですが、いかんせんわが家の脱学校生活に変化がないもので、なかなか書けずにいました。
taboくんはゲーム、読書、アニメやテレビ番組鑑賞、書店や図書館へ行くなど、基本的にやりたいことをやりつつ、少しずつ家の手伝いもやる毎日です。
夏の間は、村営プールによく通いました。
いわゆる学習的なことは一切やっていません。
(ときどき夫が抜き打ちで九九を振って本人焦る、というようなことはありますが)
そんな暮らしに少し変化があったので、久しぶりに書きます。
- 中間教室に子どもを通わせている人に会う
- 「学校復帰」は過去の話?
- 自然豊かなA教室
- いちばん近いB教室
- 元保育園のC教室
- 「その子に応じた対応」 が原則
- なぜこんなに「学校」と違うのか?
- 居場所が増えるに越したことはない
中間教室に子どもを通わせている人に会う
taboくんと同学年で学校に行っていないお子さんのお母さんと、先日ばったり会いました。
そこのお子さんは、車で1時間以上かかるフリースクール的な場所に通っているという話までは聞いていたのですが、その後どうなっていたかは知りませんでした。
聞けば、上田市内の中間教室に通っているとのこと。
非常にフィットしてほぼ毎日のように通っていると聞いて、「よかったなぁ」と嬉しく思いました。
中間教室って何? ですよね。
写真:古いけれど居心地はなかなかです
中間教室というのは、どうも長野県内独特の用語のようですね。
上田市では「ふれあい教室」と呼ばれています。
佐久市だと「チャレンジ教室」だそうです。
(いや、別にチャレンジしなくていいんじゃないかな……と思うのはわたしだけ?)
おそらく全国的には、「適応指導教室」というような名前で呼ばれているのではないでしょうか。
(適応指導……この名称も凄まじいものがありますね。いや、別に適応しなくてもいいし、指導されなくてもいいんじゃないかな、と思うのは<以下同文>)
「上田市中間教室設置要綱」から引用すると――
小・中学校の不登校の児童生徒を対象に、学校復帰に向けて集団適応指導、学習指導、教育相談等(以下「適応指導等」という。)を行うことを目的として中間教室を設置する。
とのことです。
「学校復帰に向けて」と明記されていますね。
中間教室のことは、taboくんが学校に行かなくなってすぐのタイミングで、知ってはいました。
が、「学校復帰に向けて」という点がtaboくん本人も、わたしたち保護者も求めていなかったので、早々に選択肢から外していました。
「学校復帰」は過去の話?
実際に行っている人の話を聞くと、教室によって違うということがわかりました。
これは推測ですが、「学校復帰を第一にしない」と文科省が通達を出したので、その影響もあるのかもしれません。
いずれにしても、現場の運用では学校復帰が最終目標になっていないのはとてもいいことだなと思いました。
教えてもらった話に加えて、こちらでも調べられることは調べてみました。
本人も、テレビ番組『ウワサの保護者会』の不登校スペシャルで、オルタナティブスクールやデモクラティックスクールの様子を見て、「こういう感じなら行きたい」と言っていたので、「暇つぶしになりそうだから行きたい」とのこと。
(暇つぶしって……すごいなオイ。そんな君を誇りに思うぞ)
結局は見学に行かないと何とも言えないということがすぐわかり、村の教育委員会経由で見学を申し込みました。
そして、上田市内にある中間教室5か所のうち、通えそうな3か所の見学に、夫とtaboくんで行ってきました。
わたしも同行する予定だったんですが、三男が風邪をひいてしまい留守番と相成りました。
そんなわけで、側聞レポートになってしまうことをお許しください。
自然豊かなA教室
まず、自然豊かな場所にあるA教室から。
通うとしたらわが家からはちょっと遠いのですが、自然の中で過ごすのが好きなお子さんにはたまらないロケーションです。
中間教室の建物はログハウスで、なんと薪ストーブがあります。
かつて石油アレルギーのお子さんが通っていたそうで、それで薪ストーブなんだとか。
そこまで配慮してくれるのは、すごいですね。
(学校だったら、そこまで配慮してくれるだろうか……)
ただ、スペースはとても狭いので、通う子どもが複数いて別々のことをやりたいとなると多少配慮が必要になりそうです。
いちばん近いB教室
次は、わが家からいちばん近いB教室。
ここは地域の公民館のような建物を流用しており、大きい部屋と小さい部屋がひとつずつあります。
ここも、A教室と同じで、決して広いとは言えないので、お子さんによっては過ごしにくいと感じるかもしれませんね。
しかも指導員の方に「慣れたら学習に持っていきたい」的なことを言われたそうで、わりと学習系の教室なのかなと夫は感じたようです。
とはいえ、わが家の方針を伝えたら、それはそれで尊重してくれる雰囲気だったことも付け加えておきます。
元保育園のC教室
最後に、上田市中心部に近いC教室。
こちらは保育園だった建物を流用しており、スペース的にはかなり余裕があります。
部屋がいくつかあり、ホールや園庭もあるので、いろんなことができます。
ホールには卓球台が2台とバレーボール用のネット、園庭にはバスケットボールのゴールが1つあります。
はっきり言ってかなり古いですが、少し変わった設計で、開放感があって不思議と居心地のいい建物です。
taboくんが東京で通っていた保育園もかなり古い建物で、同じようなほっとする感覚がありました。
taboくんは、この教室がいちばん気に入ったようです。
その理由は、開放感とマンガ本があること。
本棚の漫画『ドラえもん』を読みふけって、「そろそろ行くよ」と声を掛けられるまで夢中になっていたようです。
写真:本棚に並ぶ漫画は、昭和世代にはグッとくるラインナップです。わたしが小学生の時に読んだ伝記物まで! 懐かしいなぁ
「その子に応じた対応」 が原則
今回、案内してくださったのは上田市の教育相談所の方でした。
わたしは電話で話しただけですが、とても穏やかで誠実さのにじみ出る、話しやすい方でした。
相談しやすい雰囲気です。
各教室ともそれぞれに環境、施設、指導員の個性によって毛色は違うものの、一貫しているのは「その子その子に応じた対応をする」という点でした。
開室時間が決まっているとか、上履きは履いてねとか、合理性のある最低限のルールめいたことがあるだけで、いわゆる校則的なことだとか、指示が出るといったようなことは一切ありません。
過去には、ずーーーっとゲームをやっているお子さんもいたとか。
これって、すごくないですか?
形式的には、ほぼほぼフリースクールと同じなのですから。
(フリースクールとは成り立ちや目的が違うので同一視はできませんが)
しかも、公設ですから無料で通えます。
なぜこんなに「学校」と違うのか?
いわゆる学校とあまりに違う、それもグラデーションを感じさせる違いではなく、ほとんど異次元と言っていいほどの違いです。
見学に行った夫は驚いて「学校の感じと中間教室の感じにあまりに隔たりがあるんですが、どうして学校はあんな感じなんですか?」と聞いたそうです。
(夫らしい質問だ……)
すると、「学校は学習指導要領に則って運営されているからです」と答えが返ってきたそうです。
中間教室を学習指導要領通りにやろうとするのは不可能です。
だから、おのずと違いが出てしまうのでしょう。
学校に行けない/行かないということに対して、考え方がだいぶ変わってきたということの証左なのかもしれません。
不登校が「問題行動」としか考えられていなかった時代には、ここまで自由な運営はできなかったのかもしれないと想像します。
①大勢に効率よく
②極力地域差・教員による差が出ないように
教育を施すとなると、学習指導要領が存在する意味もあるのかもしれません。
が、「教育とは何か?」を突き詰めて考えていくと、現場の裁量が少なく、子ども個人のモチベーションや個性といった面倒な変数はとりあえずカウントせず、学習指導要領に頼らざるを得ない教育というのは、かける労力の割にアチーブメントは少なく、何より教育の本義からかけ離れていくような気がします。
高度経済成長期で、ある程度の教育が備わった人材が大量に必要だった時代にはこのような教育も意味があった……という言説も、検証が必要なのではないかと思います。(学術的に検証している方がいたら知りたい)
そもそも、「人材」という言葉自体がどうなんでしょうか。
人間は、じゃがいもや人参のようにおとなしくカレーになってくれるわけでもなく、文句も言わず家の一部になってくれる材木でもないのですから。
居場所が増えるに越したことはない
見学に行ったその日に、教育長に連絡を取って体験通所(?)を申し込みました。
翌朝には教育長から折り返し連絡があり、いつからでもどうぞということだったので、さっそくC教室に連絡をとり、その日の午前中から通うことになりました。
(青木村の教育長は仕事が早いのです)
今のところ2日通いましたが、本人的には満足みたいです。
taboくんは「フリースクール」と呼んでいますが、まあそこはご愛敬ということで。
保護者としては、行きたいという限りは、行かせられるようにサポートしていきたいと思います。
中間教室に通うことになったというと、「よかったね!」と言ってもらえることが多くてありがたいのですが、もしかしたら「よかった」の意味合いが少し違うかもしれない、とも感じています。
わがやでは、居場所が増えるに越したことはなかろう、という感じでしか捉えていなくて、本人が望むならばずっと家で過ごしていても一向に構わないのです。
学校の代替物、「通学」できる場所ができてよかった、とは考えていません。
それにしても、上田市の中間教室がここまで縛りのないかたちで運営するに至った経緯には、大変興味があります。
教育委員会に取材しようかしら。
また新たなお話を聞けたら、こちらでレポートいたします。